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Vol 7. ありのまま、ブータン

Vol 7. ありのまま、ブータン アプ・ボクトと樽の物語④:
森の強者たち

2015.10.03

少し前になりますが、シルバー・ウィークの連休、皆さんはいかがお過ごしになりましたか?
ブータンでも、ちょうど9月19日から首都ティンプーで“ドムチェ”、“ツェチュ”という、ブータンに仏教を伝えた高僧を讃えるお祭が開かれ、22?25日、オフィスも連休となりました。
(ブータンの“ツェチュ”については、ブータン政府観光局公式サイトをご覧ください)
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ブータン政教の中心地、ティンプーのタシチョ・ゾンで行われるツェチュの様子
 
 
私も休暇で国外旅行に出ておりまして、更新が少し遅れてしまいました。ごめんなさい!
それでは、アプ・ボクトのお話の続きに参りましょう。
 
 

アプ・ボクトと樽の物語④:森の強者たち

 
白猿と熊から命からがら逃れたアプ・ボクト。
森の奥へと進んでいくと、さらなる強者たちに出くわしました。
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すばしっこい豹が、アプ・ボクトの行く手を阻みます。
「俺はお前を今日食べてやるぞ。」
 
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「うわぁ。またしても怖い動物が現れた! 豹さん、僕はこれまでたくさん歩き、まともな食事もせず、くたくただ。今おいらを食べても、決して美味しくないよ。これからお寺に行って、食べ物をたくさん食べてくるので、その後においらを食べることをお勧めするよ。だから、今は行かせておくれ。」
と、アプ・ボクト。
豹は納得して、アプ・ボクトを逃がしてやりました。
 
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ほっとしたのもつかの間、続いては森の王者、虎がアプ・ボクトを不意打ちです。
「旨そうな人間だ。今日の夕食にちょうどいいぞ。」と虎。
 
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必死で逃げようとするアプ・ボクトですが、今日は1日まともな食事もとっていません。力が出ずに、すぐ転んでしまいました。
「頼むから、おいらがお寺に行って帰ってくるまで待っててくれ。明日、お寺でたくさんのご馳走を食べてくるから、その後に、どうぞおいらを食べておくれ。」
アプ・ボクトは、またしても同じ言い訳で、虎への説得を試みます。
最初は聞かなかった虎も、アプ・ボクトの弱りはてた姿を見て考え直し、お寺からの帰りを待つことで納得。アプ・ボクトを逃がしてやりました。
 
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今回も動物たちを言い伏せることに成功したアプ・ボクトは、なかなか勝ち誇った気分です。
 
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「野生動物どもめ。おいらだって、そんなに簡単に食べられてしまうほど馬鹿じゃないさ。何としてでも、無事にお寺までたどり着き、そして家族の待つ家に帰ってみせるさ。」
森の強者たちをうまく言い伏せたアプ・ボクトは、だんだん自信がついてきたのでした。
 
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そして、とうとう念願のお寺にたどり着いたのです!
見晴らしの良い山肌に建つ美しいお寺とチョルテン(仏塔)は、それはそれは美しく、アプ・ボクトの心は喜びで満たされたのでした・・・・・・。
 
つづきは、vol.8をお楽しみに!

Writer Profile

松尾 茜
松尾 茜Akane Matsuo

日本の大手旅行会社に5年間勤務した後、2012年よりブータン王国の首都ティンプー在住。ブータンの持続可能な観光開発事業に携わっている。地域固有の自然や文化、昔ながらの人々の生活を守りながら、ゆるやかに交流人口を増やし、地域経済を、訪れた人の心身を、着実に豊かにしていくような観光を、世界各地で促進していくことがライフワーク。

Ap Bokto
Ap Boktoアプ・ボクト

ブータン王国の田舎町出身。二児の熱血お父さん。農家で、家族と家畜と共に、昔ながらの伝統的な生活を営んでいる。敬虔な仏教徒でもある。

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