Vol 10. ありのまま、ブータン
アプ・ボクトと樽の物語⑦:
嫌な予感
2015.11.14
ブータン国民、そしてブータンに関係する多くの人々にとって、とても重要で、誇り高く、喜ばしい1日。先代、第四代国王陛下の60歳のお誕生日、11月11日の式典が無事に終了したブータン各地では、祝賀の後の清々しい静けさに包まれています。
祝典の様子が気になるという方は、以下のサイトをご覧になってみてくださいね。
ブータン国営新聞クエンセル誌・ブータン国営放送BBS
私はというと、ブータンの冬の名物詩である“オグロヅル”が飛来する、ポプジカ谷の、オグロヅル・フェスティバルに参加してきました。
↑©ブータン政府観光局
ちょうど、11月6日、北のチベットから越冬のため、今年最初のオグロヅルたちが、ポプジカ谷に到着した直後の開催となったフェスティバル。
フェスティバルの様子は、次号で写真と共に、じっくりお届けしたいと思います。
ポプジカ谷については、宮本亜門さんのブータン旅行記にも詳細に記載がありますので、ぜひ合わせてお読みください。
アプ・ボクトと樽の物語⑦:嫌な予感
樽大作戦が上々で、鼻歌交じりに転がるアプ・ボクト。
次なる敵、熊に出くわしました。
呑気な熊は、ちらりと樽を見ると、まさかその中にアプ・ボクトが潜んでいるとは思いもせず、興味なさげに立ち去っていきました。
いとも簡単に熊を騙すことに成功したアプ・ボクト。
嬉しくて、笑みが止まりません。
調子に乗って、どんどんと転がっていきます。
そして、とうとう最後の敵、白猿に出くわしました。
「おい、転がる樽よ。お前はどこから来たんだ?」と白猿。
「私はとても急いでいます。どうか、道を開けて下さい。」と、話をそらそうとするアプ・ボクト。
「どうしても尋ねたいことがあるんだ。お前、お寺の方から来たのであれば、アプ・ボクトという中年男を見なかったか?必死で探しているんだ。」と白猿。
「私はただの転がる樽です。アプ・ボクトなど、見たことも聞いたこともありません。どうぞ、道を開けてください。」
と、お決まりのセリフを慌ただしく繰り返すアプ・ボクト。
それなら仕方がない、と白猿もあきらめ、樽に道をゆずりました。
・・・・・・がしかし、しゃべる樽など、これまで見たことも聞いたこともない白猿。
どうしても納得がいかず、おもむろに、そこにあった大きな石を拾い上げたのです。
何となく、背後から嫌な予感が伝わってくるアプ・ボクトは、一目散に転がっていきましたが、すばしっこい猿は後を追い、大きな石を樽めがけて投げつけたのです!
アプ・ボクト、いよいよ絶体絶命か・・・・・・!?
つづきは、vol.11をお楽しみに。