毛穴の奥に見えたもの Vol.3
Try.3「勧められるがままに、
随分浪費してしまいました」
2016.03.13
前回の続きです。2009年の頃でしょうか。
治療法が無い、と言われて途方に暮れた私は、
「酒さなんかじゃないよ」
と診断してくれた美容クリニックを再び訪れました。
こちらでは、ドクターお奨めの『フォト』と呼ばれるIPL治療を開始しました。
「顔の産毛が脱毛されるので、毛穴が目立たなくなりますよ」
「ビタミンCのイオン導入とセットですると、美白効果も期待できますよ」
毛穴ケアと美白の誘惑に、私は、なす術がありません!
数回『フォト』を試してみると、何だか毛穴が引き締まったような、色ムラも、
心なしか改善したような気がしてきました。
すると先生がたたみかけます。
「チケットを5回分購入すると、1回分無料でサービスするお得なシステムを
始めたんですが、どうですか?」
それからは、チケットを5回分ずつ、まとめて購入しては、1カ月に1回、
あるいは3週間に1回という具合にマメに通い始めました。
施術の流れは簡単です。
顔を洗ってメイクオフしたら、ゴーグルを装着。麻酔作用のあるジェルを塗布した顔面に、
パシャパシャと熱い光を当てていきます。
(目を閉じているので、もちろん何をされているかは、まったく見えません)
熱いのは一瞬で、痛みも特にありませんでしたし、
ゴーグルの下で感じるフラッシュのような眩しい光にも、すぐに慣れました。
ビタミンCのイオン導入も、もちろん痛くもかゆくもないのですが、
電極を握って通電する際、歯に染みるんですよね、金属が詰めてあったから。
これはナンとも不快でした。
アルミホイルを噛んでしまったときの、あの感じ、これには慣れませんでしたね。
今から思えば、綺麗になる努力をしていること、
手間とお金をかけていることに自分自身が充実感を感じていたのでしょうね。
毎週の様に予約を取り、結局このクリニックには2年間ほど通ったでしょうか。
というのも、治療で通院する過程で、毎回のように新メニューが
クリニックの壁に貼ってあるのを目にすると、つい、脱毛も申し込んだり、
プラセンタ注射もやってみたりと、いろいろとついで買いをしてしまったのです。
結局、IPL治療の具体的な効果も実感できないまま、
「何となく肌がツルッとする」ので通い続けてはいたのですが・・・・・・
肝心の顔の赤みについてはまっく改善しないし、
そのことを先生に相談すると、
「アトピーじゃないし、何だろうね」
「とにかくフォトは続けるように」
を繰り返すだけなので、さすがに私も不信感が強まってきました。
時期を同じくして、当時小学校低学年だった次女の素行の悪さがエスカレートしていき、
毎週のように、学校からは呼び出しがかかるようになってしまいました。
朝は遅刻。
クラスメートとはトラブルばかり。
忘れ物は毎度のことで、時間も約束も守らない。
作文にいたっては「どうせ提出しないでしょうから」と、
先生が創作したものが作文集に掲載されているような始末。
頼みの綱である主人は忙しいし
「子育ては君の仕事だろ」
と、話も聞いてもらえないどころか、段々と自宅にも帰らない日が増えて、
週末に会えるか会えないか、という状態でした。
私はといえば、次女の素行が少しでも改善すればと、
毎週のようにスクールカウンセラーや心理学の専門の方と会い、
多々相談はするのですが、まったく具体的な解決策はなく、
いたずらに時間が過ぎていきました。
次女にとっては、私の顔が赤いことも格好の攻撃対象だったようで、
毎日毎日ひどい言葉で罵られ、追い詰められていく辛い日々でした。
自分の顔のことなど、かまう余裕もなくなり、
いつしか私は何もしなくなっていきました。
ある日、クリニックから電話がかかってきて、
「未消化分のチケットがありますよ」と言われて初めて、
「あ、フォトいかなきゃ」
と思い出したものの、結局そのまま終わってしまいました。
そんな中、あの東日本大震災が起こりました。
2011年3月11日。
自宅で大きな揺れを感じ、すぐさま娘たちの安否の確認をしました。
交通網の混乱のなか、二人とも何とか帰宅することができ、ホッとしたのを覚えています。
その晩も、主人からは電話一本ありませんでした。
「娘たちにも、私にも、まったく関心が無いんだな」
改めてそう自覚することは、胸が張り裂けそうな、とても哀しいことでした。
数日後、何事もなかったかのように家に帰ってきた主人を見たとき、
私は小さな決意をしました。
この事は、また次回にお話しさせてくださいね。
わたしが綺麗と思うもの。
「銀座で見かけたドラえもんは、スワロフスキーのもの。
可愛らしくも神々しいこちらは5,6000円也。」
可愛らしくも神々しいこちらは5,6000円也。」