楽しみ、楽しませ、ほんのちょっと楽になる

Vol.141台湾から来た白い犬の日記

Vol.141台湾から来た白い犬の日記 ゲイとして生きること(後編)
自ら死ぬという選択肢

2016.11.28

前回の続きです。

主要先進国にはLGBTの人たちを守る法律が多く整備されていますが、
日本には皆無なのです。法律で守られていないということは
本当に危うい状況下に置かれていることなのです。

そんな状況であっても人はカミングアウトをすることがあります。
そして、カミングをアウトすることは本人にとって大きな一大決心であり、
危険にさらされることを覚悟しているとはいえ、
できればそんな危険にはさらされたくないのが本位でしょう。
ですからカミングアウトされたら冗談ではなく、
重いのは重々承知ですが真剣に受け止めていただけるよう願います。

こんなマイナーな元野良犬の私Cocoが何を言っても社会は変わらないことでしょう。
しかし、一人でもここの文章を読んで真摯に彼らのカミングアウトを受け止めてくれたら、
それはそれでもう大きな変化だと思っています。
 
大きな変化もいつも小さな声からはじまります。
その小さな声の一つになれれば嬉しいと思って書いてみました。


中には
「でもー、ゲイって自分で選んで同性が好きになっている訳でしょ?
という意見もよく聞かれますが、Japanさん個人の見解としては選んでいないと言っていました。

生まれつきなことで、選ぶことなくこう生まれてきていると。
誰も選んでゲイにに生まれたわけではなく、もともとこうなのです。
米国でのある研究で
「ゲイであることは自ら選んでなったことか? それとも生まれつきか?
という質問でほとんどが生まれつきと答えています。

そして、そのゲイの人たちに
「もし選べるのならGay(同性愛)とストレート(異性愛)どちらを選ぶか?」
という質問で多くの人がストレート(異性愛)という返答をしています。

その理由として:
社会がゲイを受け入れきれていない。基本的人権が保障されていないsecond-class citizenである。
自分の今の困難を考えるとストレートであれば、
どれほど楽なことであったろうと思えるからというものでした。

これは自分がゲイで生まれ育ってきたことを、今の人生を決して否定しているというものではなく、
今のゲイとしての人生に満足しているとしていても、
それでもやはりこの現社会ではゲイとして生きるよりもストレートとして生きていく方が
数段楽なのではないかという素直な感想なのです。

それほどこの社会はゲイにとっては過酷な環境であり、
Japanさん、そして私Cocoのアメリカ人父のDさんたちもそう思っているそうです。



先の一橋大学の学生さん、学校のカウンセリングの方にも救いを求めましたが、
そちらでも理解がなく何も助けてはもらえなかったようです。

私Cocoのこのページでは、私の飼い主のJapanさんとアメリカ人父のDさんは
ゲイということを隠さず出していますので、
ゲイの方たちに読んでもらえることも多いようですので、
最後にJapanさんからの彼らへのメッセージをお送りします。
 
 
こんにちは。Coocの飼い主の“Japanさん”です。
現在のアメリカのサンフランシスコという、
ゲイには寛大なはずの地域にある職場でもゲイという理由で嫌な目に遭ったことは否定できません。
どこに行ってもこの障害はあるのかもしれません。
 
一人で解決できなかったら信頼できる人に救いを求めていいのです。
私も職場で色々な人に助けてもらいました。
でももし、そのような人が周りに全くおらずどうしよもない状態になったら逃げてください

逃げるというと少しニュアンスが違うので言い換えると、そんな環境捨てていいのです。
楽なことではありません。でも、他の何かを失うとしてもそれはまた手に入れることができるものなのです。
命を失うことは選択肢に入れないでほしいのです。

私も日本から逃げました。言葉も不自由、法的な滞在権利も不安定、食事も合わない。
日本にいればこれらの心配する必要がありませんでした。
逃げたという言葉には語弊があるかもしれませんが、日本に留まりませんでした。

あのまま日本で就職して嘘に嘘を重ねる人生が怖かったのです。
今考えると無謀で無計画でどうしよもないヤツだと思います。
でも今その無謀な決断をした22歳の頃の自分を褒めてあげたいです。


今は言葉もまあ話せる、法的滞在権利も安定、食事だって合わないなら自分で作ります。
両親に頻繁に会えなくなったのは悲しむべきことではありますが、
自分はこちらを選びました。すべてがバラ色という訳ではないのは本音。
別に僕は日本を捨てろと言いたいのではありません。
要はどんなに困難になっても命さえあればどうにかなるということを言いたいのです。

学校の世界でも、大人の世界でも、ネットの世界でもあるいじめ。
ゲイ、頭が悪い、容姿が悪いいろいろな口実であっさり人を残虐に冷酷に攻撃。
そのいじめには万能の対策はないのかもしれません。
でもどうしよもなくなっても、きっとどこかに逃げる道は残されていると思います。
命を絶つ必要は一切ないのだと僕は思います。

だからどうにもならなくなったらバッサリその場所を捨ててしまうのを
選択の一つに持っておいてほしいです。
 
 
命を絶ったらもう本当に他の未来への道は無くなってしまうのです。
そしてそんなぎりぎりの瀬戸際を歩いている人がいたら、何らかの手を差し伸べてあげてほしいです。
話を聞いてくれる、解ろうとしてくれる人がひとりでもいると、
人は命を絶つことを思い止まらせることができるのだ思います。

PH1_cocov141-1-20161119.jpg
現在日本では毎日65人の人が自ら命を絶っているのだそうです。
1時間に2人の割合です。日本の統計はありませんが、
米国では自殺の30から40パーセントはゲイなどのLGBTと言われるセクシュアルマイノリティーによるもの、
台湾ですと自殺の20パーセントほどがLGBTによるもののようです。
おかまっぽいとか女っぽい、人と違うというだけで簡単に攻撃の対象になってしまうからでしょう。

LGBTに優しくないこんな社会で生きていくのは正直楽ではありませんが、
それなりに楽しいこともあるものだと僕は信じたいです。

ゲイであることは1000パーセント悪いことではありません。

ゲイであるあなたの命は大変尊いものなのです。
生きていればきっと、いや絶対いいことがあるものなのです。
だから誰に何を言われても、しぶとく生き抜いていきましょう!

容姿は普通以下、知能はたぶん普通くらい、
性格はかなり引きこもり系で非社交的、お金持ちに生まれたわけでもないこんな僕でも、
それなりに満足できる人生を送っているのを見ると、
御自分にもできそうに思えませんか?(笑)

Writer Profile

Coco
Cocoココ

台湾生まれ台湾育ちのフォモサ犬系雑種。野良犬だったため正確な年齢は不詳:性別、女推定9歳。台北で殺処分直前に現地の動物保護団体にレスキューされる。その後紆余曲折を経て、2010年、サンフランシスコ在住の日本人男子Japanさんとアメリカ人男子Dさんのカップルの家の養子となる。食べることと散歩が大好きだが鶏肉アレルギーがある。

Back Number

その他のバックナンバー

ページトップ