「生きるってどういうことだろう?」「幸せってなんだろう?」
そのヒントがあるのではと、宮本亜門さんとブータンをおとずれました。
10泊 11日のブータンの旅。
その旅はあまりにも新鮮で、あまりにも清々しくて・・・・・・。
今回の旅で、素晴らしい贈り物を、たくさんもらいました。
それらをぜんぶ素直に届けます。
それが、WEBマガジン・ハタラクだからこそ、できることだと思ったので。
全20回のブータンストーリー。
毎週日曜日に更新中。
あなたもブータンをとおして、幸せを、生きることを、感じてください。
カディン チェ ラ(どうもありがとう)!!
12月18日 前編
大きなビジョンのなかの、今の一瞬。
旅:4日目
12月のブータンの朝は、吐く息が白くなるほどの寒さ。
ホテル近くに流れる川の音、鳥の鳴き声、山並みから溢れる朝日が、その寒さで一層研ぎ澄まされ、キラキラ輝いているように感じます。
朝8時30分、ホテルのロビーに集合。亜門さん、ゆっくり休めましたか?
「お蔭で、今までないほど、ぐっすり。朝も鳥の声と川のせせらぎで目覚めて、気分は最高。さぁ、今日もよろしくお願いします!」。
早速わたしたちは、ロケバスに乗り込み、今日の最初の目的地、『シムトカ・ゾン』へ。
ブータンには『ゾン』と呼ばれる城塞・僧院・県庁の意味合いを持つ大建築があります。
小高い丘の上に建つ『シムトカ・ゾン』は、ブータン国内で最も古いゾンで、17世紀にブータン統一の祖であるシャブドゥン・ンガワン・ナムゲルによって建てられました。
現在は史跡として、ブータン国民にも人気の場所となっています。
静かで穏やかな空気が流れるシムトカ・ゾン。壁面をじっと見入る亜門さん。仏教の世界観を記す「六道輪廻(ろくどうりんね)」の教え(この世に生きるすべてのものは、六道の世界に生と死を何度も繰り返して、さまよい続ける)が描かれた仏画です。
『六道』とは、生前の行為の善悪によって、死後に行き先が決まる六つの世界(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)をいい、『輪廻』とは、車輪が回転し続けるように、無限に生死をくり返す。魂は不滅で、死後も生まれ変わるという仏教的な考えかたを表しています。
ホテルから約15分。到着した『シムトカ・ゾン』内を、ゆっくり拝観する亜門さんが、足をとめたのは、壁に描かれた色彩豊かな仏画の前でした。
「こうやって仏教のことを見つめると、なるほどと思うことが多くあります。
輪廻転生のなかの一部として、今、こうやって自分たちが存在していること。
しかも僕たち人間は、あらゆる可能性を持っていて、まだこれから変わっていくことのできる途中の段階であること。これって巨大なビジョンだよね。
仏教って一見、シンプルで穏やかなイメージで、こじんまりしてみえるけど、実は、神がつくりし巨大なビジョンのなかに、自分たちが存在しているってことなんだね。正直、今まで、ピンとはきていなかったけど、この国でこの絵を見ているとビシビシ感じるよ。
ブータンの人たちは、日々生きていることが、どれほど大切で、素晴らしいことなのかということを、こういう仏画からも感じているんだろう。輪廻転生という巨大なビジョンのなかの、今の一瞬がどれほど大切かということを」
ブータンに流れる仏教思想から、亜門さんは、大きな何かに気づいた様子です。
「だからかな。『この今生でなんとかしないといけない』、『この今生で成功しなきゃ』とか、『失敗は許されない』とか、がんじがらめになって、自分を息苦しく責めているものが、ブータンの人たちにはないようにみえる。それよりも、余裕をもって今を大切に生きていこうよって。
やっぱり、仏教の巨大なビジョンのなかに、彼らがいるという現われだね」。
ブータンに来てまだ二日目ですが、ガイドさんや、ホテルのスタッフをはじめ、このブータンに流れる、穏やかで優しい、しかも大きいこの空気感や余裕、いい意味で時間に焦らない感じは、なんだろうと思っていました。
それは、今の時間を日々楽しむ、この仏教観から来てるのかーと。だからとても心地いい、なるほどなーと、感動すらします」
ゾン内には、海老茶色の衣を纏った、若い僧侶の姿を多く見かけます。凛々しく、精悍な顔つきが、どこか昔の日本人のような・・・・・・。
『シムトカ・ゾン』での時間を過ごした後、
「今、生きていることだけでも、壮大!
僕たち人間は、まだまだ成長段階。だからこそ、もっともっと可能性がある!
凄くポジティブになってきた!!」
と、亜門さん。そして・・・・・・
「ブータンに流れるものは、古いなんてことはまったくない。むしろ新しさを感じる」
亜門さんが感じはじめた“新しさ”。幸せの尺度をひも解くキーワードの予感です。
カディン チェ ラ!
ブータンの国技は弓技!
ブータンの国技が弓技だったことを、ご存知ですか?
隣国と争いをしていた時代、まだ銃などもなく、弓で戦っていたころの名残りで、弓技が国技になったそうです。
ブータンでは、各村ごとに弓技場があり、週に一回の頻度で行っています。
男性陣が弓を射り、女性たちが歌に合わせてダンスをして応援するのが、ブータン流。
しかし国技といっても、決して特別なものでなく、日常生活で国民の誰もが気軽に楽しめるのも、とってもブータンぽいなーと感じました。
ちなみに毎回、この弓技の後は、みんなでお酒を酌み交わし、ダンスを踊るのが通例だとか。このようなつながりが、ブータン人の絆を深めているのかもしれません。
約140m先にある的を目指して弓を射ります。的に当たると、競技者全員が集まって喜びのダンス! 村の女性たちも応援に駆け付け、弓技場は華やかに。
宮本亜門AMON MIYAMOTO
演出家
1958年1月4日生まれ 東京都出身
ミュージカル、ストレートプレイ、オペラ、歌舞伎等、ジャンルを越える演出家として国内外で幅広い作品を手がけている。
http://amon-miyamoto.com/jp/
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- ブータンの地に一歩。
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- 12月18日 前編
- 大きなビジョンのなかの、今の一瞬。
- 12月18日 後編
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- 12月23日 前編
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- 12月24日 前編
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- 亜門さん、GNH委員会の人と話しませんか?
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- 幸せの尺度。
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- 【英語版】Courage of Bhutan
- Special feature
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- December 25th, 2015
- 【英語版】Scale of Happiness