「生きるってどういうことだろう?」「幸せってなんだろう?」
そのヒントがあるのではと、宮本亜門さんとブータンをおとずれました。
10泊 11日のブータンの旅。
その旅はあまりにも新鮮で、あまりにも清々しくて・・・・・・。
今回の旅で、素晴らしい贈り物を、たくさんもらいました。
それらをぜんぶ素直に届けます。
それが、WEBマガジン・ハタラクだからこそ、できることだと思ったので。
全20回のブータンストーリー。
毎週日曜日に更新中。
あなたもブータンをとおして、幸せを、生きることを、感じてください。
カディン チェ ラ(どうもありがとう)!!
番外編
亜門さん、死って怖いですか?
ブータンに滞在しながら、輪廻転生、死は当たりまえのこと、仏教観と、一気にいろいろな風を感じました。
ここで、亜門さんの持つ死生観というか、見えない世界への感覚を聞いてみたくなって・・・・・・。
亜門さんは、精神世界や見えない世界というものに、もともと興味を持っていたのですか?
「きっかけは、お袋の死だった。
僕が21歳のとき、お袋が脳溢血で突然亡くなってね。ちょうど僕が出演する舞台の初日の朝だった。
それから二ヶ月間の公演も終わり、その後は、孤独で、孤独で、きっと生きていけないと思っていたら、まったくそうじゃなかった。
これはうまく説明できないんだけど、上のほうからお袋がいつも『大丈夫よ、大丈夫よ』って言ってくれているような、温かささえ感じてね。自分の頭がおかしくなったのかと真剣に悩んだよ、人に言ったらおかしいと思われるだろうし、自分の妄想もここまで来たのかってね(笑)。
でも実際、お袋が亡くなった後のほうが、不安や強烈な孤独感に襲われなくなった。精神本や宗教本も何も読んだことがなかったし、正直、困惑はしたけど、僕には嘘のない事実なんだから、人にどう思われようと、『やっぱり、母が、本当に見てくれているんだって』思うことにしたんだ」
ではそれからずっと、お母さんを傍で感じていると?
「いや、演出家になって1、2年たった30過ぎたころ、『あ、もう見てくれていない』とふと思った。語りかけても、一切返事が返ってこない感じがしたんだ。『母は、どこかに行ったんだ』と、ふと寂しくなったけど。
その後は、辛すぎるとき『こんな息子で大丈夫かい?』と聞くと、時たま来てくれるけど、ほとんどは来ていないような。もっと大きなところで、温かく見守ってくれているんだろうな。前とは違う感覚で。
後になって思ったんだけど、それはきっと、僕が演出家になれて無心になれることを見つけたからだと思う・・・・・・少し安心してくれたんじゃないかな。まぁ、本当はどうかは、死んでみないとわからないけど。でも、これは僕にとって紛れもない実感なんだ」
では、亜門さんにとって死は怖いものですか?
「怖さはないけれど、死ぬ前に怖いことはイヤだ。飛行機が落ちる前に叫ぶとか(笑)。死ぬということよりも、怖い体験、恐怖感がイヤなだけ。
驚いたのは、僕は大きな交通事故を数年前にした時のこと。
タクシーがスピードを出して柱にぶつかったお陰で、後部座席からフロントガラスを突き破って飛んで、死んでもおかしくないような大怪我をしたのに、全然痛みがなくてね。
ただ、意識を無くして、真っ白な世界のなかに入っていって・・・・・・『もう帰りたくない』というぐらいに、幸せな感覚に包まれたのを覚えている。だから、死んだら幸せなんじゃないかな。だけど、その前に怖いことや、恐怖感を味わうのは、絶対ゴメンだ!!」
死ぬ前の恐怖感、たしかにイヤですよね。
「僕が30代のころ、映画の『ゼログラビティ』のような、宇宙の真ん中に自分だけが浮いている夢をよくみた。周りには誰もいない。遠くに惑星が見えるんだけど、『ひとりぼっち、もうどこにも行けない』この夢が、一番孤独な感覚を味わった時だったかな。
でも、交通事故で死にかけた時は、違ってとにかく温かかった。まるで自分が赤ちゃんになって無条件の愛情の温もりに包まれているような、幸せな浮遊感。『わぁ幸せだー!』って(笑)。悩みなんかまったく無し(笑)
だからこそ、この現世は辛い事も、苦しい事も全て修行、それを経験できることこそが、最高の喜びなんだと逆に思うようになった。どうせ死んだら何もせずに幸せなのだから、このいろいろ起こる喜怒哀楽を、悩んでないで楽しまないとってね。でないと、もったいないもの」
カディン チェ ラ!
祈りをこめるマニ車。
ブータンの街や、お寺などいたるところにあるマニ車。円筒状をしているこのマニ車は、なかに経典が入っています。
マニ車を一回回すと、お経を一回読んだことになる、つまり、『徳を積んだことになる』そう。そして回しながら、唱えている言葉は・・・・・・
「世界中のすべての生き物、自然が平和で幸せでありますように」と、万物の幸福を願っているブータンの人たち。
ちなみにマニ車は、時計回りに回します(わたしは反対に回していて、ガイドさんに笑われました)。
持ち運びのできるマニ車もあり、ブータンの年輩の人たちが、手持ちの金属製のマニ車を回している姿も頻繁に見かけます。
まさに信仰に溢れた国。
ブータンのいたるところにあるマニ車。自分の幸せでなく、すべての命あるものに祈りをささげる精神に、日々の生活の傲慢さに赤面する思い(汗)。
宮本亜門AMON MIYAMOTO
演出家
1958年1月4日生まれ 東京都出身
ミュージカル、ストレートプレイ、オペラ、歌舞伎等、ジャンルを越える演出家として国内外で幅広い作品を手がけている。
http://amon-miyamoto.com/jp/
- 12月15日
- 出発。じらされてブータン。
- 12月16日
- なぜかバンコク!?そしてなぜ、ブータン?
- 12月17日 前編
- ブータンの地に一歩。
- 12月17日 後編
- 生かされている感覚。
- 12月18日 前編
- 大きなビジョンのなかの、今の一瞬。
- 12月18日 後編
- なにが幸せかは、まだわからない。
- 番外編
- 亜門さん、死って怖いですか?
- 12月19日
- 宇宙と向き合える場所。
- 12月20日 前編
- 魂が宿る場所。
- 12月20日 後編
- クリーンにリボーン!
- 番外編
- 亜門さん、今のブータンについて話しませんか?
- 12月21日
- 生きてることが幸せ。
- 12月22日
- お釈迦様も自分も自問自答。
- 12月23日 前編
- 焦らず、一緒に幸せの国にしていこう。
- 12月23日 後編
- 変わらずにある、大切な何か。
- 番外編
- 亜門さん、今は死をどう感じますか?
- 12月24日 前編
- ブータンは新しい国!
- 12月24日 後編
- ブータンの勇気。
- 番外編
- 亜門さん、GNH委員会の人と話しませんか?
- 12月25日
- 幸せの尺度。
- December 24th, 2015
- 【英語版】Courage of Bhutan
- Special feature
- 【英語版】Talk with the officer from GNH Commission
- December 25th, 2015
- 【英語版】Scale of Happiness