「生きるってどういうことだろう?」「幸せってなんだろう?」
そのヒントがあるのではと、宮本亜門さんとブータンをおとずれました。
10泊 11日のブータンの旅。
その旅はあまりにも新鮮で、あまりにも清々しくて・・・・・・。
今回の旅で、素晴らしい贈り物を、たくさんもらいました。
それらをぜんぶ素直に届けます。
それが、WEBマガジン・ハタラクだからこそ、できることだと思ったので。
全20回のブータンストーリー。
毎週日曜日に更新中。
あなたもブータンをとおして、幸せを、生きることを、感じてください。
カディン チェ ラ(どうもありがとう)!!
12月19日
宇宙と向き合える場所。
18日、ティンプーの農家を訪ねた後、わたしたちは再び、空港のある都市パロに移動しました。ある少年僧と会うためです。
彼は15歳のPhub(プム)くん。初日に訪ねたデチェンプ僧院で学んでいます。
家族は母親と妹と弟の4人。お父さんは、今はいません。お母さんが米、りんご、唐辛子などの農作物をつくって生計をたてているという、決して裕福な家庭ではありません。
パロ市街から山間部へ向かうと、そこにプムくんの生家があります。お母さんのPem(ペム)さん、妹のDema(デマ)さん、弟のNangon(ナンゴン)くんと記念撮影。
家にお邪魔すると、亜門さんがとても気になる部屋がありました。仏間です。
「大きな仏間ですね。ここで毎日、お祈りするんですか?」
と、亜門さんが質問すると、プムくんが答えます。「毎日、お線香、水などをお供えしてお祈りをします」と。
続けて亜門さんが、聞きます。
「お祈りは、亡くなったご先祖さまとか、家族に向けて?」
「仏様にお祈りをする」との答えが返ってきました。
ブータンには輪廻転生の思想で“人は亡くなったら49日で生まれ変わる”と考えられているので、お仏壇に位牌もなく、お墓もなく、亡くなった人に祈るという発想はないそうです。そして“すべての生き物が、仲良く、思いやりもって、生きていけますように”と、祈るそう。
一部屋すべてが仏間。これはブータンでは一般的なことで、マンションでも必ず仏間があるそう。亜門さんも祈ります。
亜門さんは、あることを思い、こう話しました。
「プムくんの学校の先生も言っていましたが、ブータンでは自分のため、家族のためという特定のものに向けて祈るのではなく、この地球上のすべての生きているもの、それは人間だけでなく、この自然も、動物も、植物も、すべての生きとし生けるものに祈る。
これってもの凄いことだと思うんです。
僕らは、困ったときだけ祈ったり、お願いしたり、しかもそれは自分だけのためだけとか(笑)。それがここでは毎日、この地球上のすべての生きもののために祈っている」
祈ることをとおして、またひとつ感じることがあった亜門さんが、プムくんのお母さんに尋ねます。
「幸せですか?」
お母さんは、即答します。「幸せです」。息子も立派な僧侶になるために学び、こうやって家族仲良く暮らせている。だから幸せですと。
少年僧の家族の生活を垣間見、このタイミングでこのブータンに来ていることを、亜門さんは、こう語りました。
「残念ながら地球は、人間社会の思惑で、どんどんGNPの方向に進み、物質社会にますます引っ張られている。
自然を忘れて、あたかも人間が自然を支配するものだと思っているように。そんな悪循環が加速しているなかで、ブータンは最後の砦のような気がするんだ。
“人間が人間を幸せにする”だけではない、もっとそれ以上の地球の母性であるとか、エネルギーであるとか、太陽、月、神々・・・・・・すべてに向けて、感受できる喜び、生かされていることが人間本来の幸福なんだろうなと気づかせてくれる。それが、このブータンには、残っているんだな。また、そういうことを感じやすい、気づきやすい場所ということもあるんだね。
だから、ブータンは単なる理想の場所ではなくて、自分自身の本当の内なる宇宙と向きあえる場所になる。
こうやって、ブータンに来てから僕はずっと考えている、『次に自分は、この地球で何ができるんだろう』って。自分で再確認をしている最中です。
僕がここでもらった感動を人に伝えていくことだと思うし、人間は分かり合え、愛し合える、そういうことを舞台や、こうやって話すことで、届ける役目をいただいている、そんなことを感じさせてもらっている、感謝しかないですね。
カディン チェ ラ!
Bhutan Mandala Resortブータン・マンダラ・リゾート
世界各国の人たちに、愛用されている三ツ星ホテルのブータン・マンダラ・リゾート。
2014年3月にリニューアルオープンされたばかりで、気取らず、気張らず、自分の家のようにリラックスできる空間です。
また、別棟には焼いた石を木製の浴槽に入れる伝統の石風呂(ドツォ)(現在改装中)も完備。体を芯から温める作用は抜群です。
(左上)郊外の見晴らしのいい高台に建つホテル。夜はこぼれんばかりの星空が・・・・・。(左下)木をふんだんに使った客室。(右)気持ちいい日差しも差し込む石風呂。
●ブータン・マンダラ・リゾート
http:// www.bhutanmandalaresort.bt/
※こちらのホテルは公定料金で宿泊できます
生活に根付く民族衣装
日本でいえば『きもの』のように、ブータンにも民族衣装があります。
しかも、日本のきものが特別な時に着るのと違い、ブータンの民族衣装は仕事や学校、大切な行事やお祭りのとき着る習慣があるので、しっかりと生活に根付き、愛されています。
この民族衣装は、男性が着るものは『ゴ』、女性が着るものは『キラ』と呼ばれ、その柄も色もさまざま。最近では着やすくするために、マジックテープなどで工夫されたものも。
亜門さんも今回の旅で、街中の民族衣装やさんで『ゴ』を購入。着かたは慣れるまで、なかかな大変ですが、男性の『ゴ』は一枚の布でできているので、それこそ、きもののように着ます。また、女性の『キラ』は上下に分かれていて、上はきもののような合わせがあり、下は巻きスカート風。
ブータンを旅する際は、ぜひ民族衣装を着てみてはいかがでしょう。
(上段)これが民族衣装の『ゴ』と『キラ』。各人が好きな色、柄を自由に楽しみます。(下)亜門さんが訪れた農家のリビング。右の棚に収められているのが民族衣装です。そのカラフルさと量にびっくり。
宮本亜門AMON MIYAMOTO
演出家
1958年1月4日生まれ 東京都出身
ミュージカル、ストレートプレイ、オペラ、歌舞伎等、ジャンルを越える演出家として国内外で幅広い作品を手がけている。
http://amon-miyamoto.com/jp/
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