「生きるってどういうことだろう?」「幸せってなんだろう?」
そのヒントがあるのではと、宮本亜門さんとブータンをおとずれました。
10泊 11日のブータンの旅。
その旅はあまりにも新鮮で、あまりにも清々しくて・・・・・・。
今回の旅で、素晴らしい贈り物を、たくさんもらいました。
それらをぜんぶ素直に届けます。
それが、WEBマガジン・ハタラクだからこそ、できることだと思ったので。
全20回のブータンストーリー。
毎週日曜日に更新中。
あなたもブータンをとおして、幸せを、生きることを、感じてください。
カディン チェ ラ(どうもありがとう)!!
12月22日
お釈迦様も自分も自問自答。
シムトカゾン、少年僧プムくんとの出会い、タクツァン僧院詣でと、パロでの濃厚な時間を過ごしたわたしたちは、次なる目的地、車で約4時間のプナカへ。
プナカは1955年にティンプーが首都になる前までの約300年間、首都があった歴史ある街です。そしてプナカを代表するお寺『プナカゾン』に向かいます。
『プナカゾン』は、“ブータンでもっとも美しいゾン”と言われ、パロの『シムトカゾン』に次いで二番目につくられた古いゾンです。現在はプナカ県の県庁としての政治的機能を持ちながら、第五代国王の結婚式も行われた、重要な場所でもあります。
父川(ポ・チュ)と母川(モ・チュ)の合流点に建つ『プナカゾン』の神々しさに酔いしれながら、わたしたちは歩みを進めます。
2008年に再建された、ブータンの伝統様式を取り入れた屋根つきの橋を渡り、中庭に。そこには大きな菩提樹がお出迎え。
『プナカゾン』を見つめる亜門さん。周囲を川と山に囲まれた美しいゾンにため息しか出ません。
ゾンのなかを進んでいくと、仏様や、宇宙をイメージした壁画が表れます。そして仏様が御本尊の大きな講堂(キュンレイ)を拝観。撮影はできない神聖な場所です。
「こちらはお坊さんの朝礼や儀式を行う場所。第五代国王の結婚式もこの講堂で行ったんですよ。ティンプーが首都でも、国の儀式は必ずここでやります」と、ガイドのディケさん。続いて、講堂内に描かれたお釈迦様の一生の話を聞きました。
ディケさんが、壁画に合わせて説明してくれたお釈迦様の生涯を、シンプルに紹介しますね。
「お釈迦様は釈迦族の王(ガウタマ・シッダールタ)として誕生し、生まれてすぐに七歩歩き、『天上天下唯我独尊』と説いたそうです。
お父様の王様は、ガウタマ・シッダールタに『次の王様になってほしい』と願っていましたが、彼は望んでいませんでした。それを心配した王様が占ってもらったところ、『この方は王様でなく、世界の特別な人間になる』と。
それでも王様は『彼にどうしても王様になってほしい』と願い、ガウタマ・シッダールタに王様の生活の勉強をさせるためと言って、華やかな宴や楽しいことを次々に体験させ、城外に出かけないようにしむけたのです。
しかし、ガウタマ・シッダールタは、世の中を知ろうとお城から抜け出し、四つのことを知りました。生まれること、年をとること、亡くなること、病気になること。そして彼はカルマ(業)というものに気づいたのです。
その後、奥さんと子どもをお城に置いて悟りの道に入り、何も食べず、何も飲まず、瞑想をし続けたガウタマ・シッダールタ。そして凄くやせてしまって・・・・・・そんなときに、スジャータという女性が現れ、ミルクとごはんをお供えしました。
しかしそれを食べたら、お腹を壊してしまった。でもそのスジャータの優しさの“思いやりの力”で安心したことで悟りを開くことができたと、いわれています。つまり苦行だけでは悟れなかったんですね。
悟りを開いた後も、悪い魂とか悪魔など、さまざまな困難に見舞われながらも、お弟子さんたちに仏教を教えました。そして涅槃に入ります。みんなが泣いて、悲しがりました。その後、お釈迦様の火葬をしたところ、大勢の人たちが集まってきました。その中のひとりのお坊さんが『みんなで仲良くしよう』と言い、お釈迦様の骨をそれぞれに分け、それが仏舎利として現在も世界中に存在しているのです」
ディケさんのお釈迦様の生涯の話を聞き、『プナカゾン』の荘厳な空気のなかで、さまざまな思いが亜門さんの中で湧いてきました。
「僕は仏陀が苦行をしたから、清貧だから悟ったと思っていただけに、スジャータの存在がいたことで、人と係ることで悟りを得たというシーンがとても新鮮でぐっときたな。
彼の人生は史記や小説、マンガと沢山読んだけど、そこの部分がこれほど意味があって、現代人にも説得力があるとは思わなかった」。
さらに、今、このわたしたちがいる状況と、お釈迦様の状況が重なる部分もあるのではと、続ける亜門さん。
「今の我々は、すべてに物が溢れていているだけに、
『何が人間に最も大切なことなのか』が、分かりにくい。
それと同じで、仏陀は生まれた家が王族で、すべてに物が溢れて、欲も溢れ、自分が手に入れようと思ったら何でも手に入る中で生まれた。それなのに、それをあえて自分で断ち切り、自問自答のために、自分の心と本質を探るために葛藤をはじめたんだね。
『人間にとっての本当の幸せとは何か』。これって、世界のほとんどの国や政府が資本主義を信じきっている今、ブータンの国王がそこに行かず、真摯に向き合っている様は、まさに同じだよね」。
ブータンに脈々と流れる仏教観に深く触れる時間のなかで、亜門さんの感動がさらに膨らんでいくのが感じられました。
カディン チェ ラ!