「生きるってどういうことだろう?」「幸せってなんだろう?」
そのヒントがあるのではと、宮本亜門さんとブータンをおとずれました。
10泊 11日のブータンの旅。
その旅はあまりにも新鮮で、あまりにも清々しくて・・・・・・。
今回の旅で、素晴らしい贈り物を、たくさんもらいました。
それらをぜんぶ素直に届けます。
それが、WEBマガジン・ハタラクだからこそ、できることだと思ったので。
全20回のブータンストーリー。
毎週日曜日に更新中。
あなたもブータンをとおして、幸せを、生きることを、感じてください。
カディン チェ ラ(どうもありがとう)!!
12月23日 前編
焦らず、一緒に幸せの国にしていこう。
旅もいよいよラストスパートを迎えます。プナカから車で約2時間のポプジカに、わたしたちは訪れました。ここは緩やかな谷が広がり、毎年約500羽のオグロヅルも飛来する湿原もあります。
そんなポプジカの谷を、ゆっくり散策しながら、亜門さんの今のブータンへの思いをうかがいました。
「ブータンの国ができたのは、日本の江戸時代にあたると言っていた。そんなに古いわけじゃない。だから、近代の新たな発想と、受け継がれてきた仏教とを融合させることができたんだろうね。そういう意味でとても革新的な国王たちの力を感じる。
仏教の精神と、『少しでもよくしていこう。焦らずみんなと一緒に幸せの国にしていこう』という国王の言葉と考えかたが、優しく手を差し伸べている姿がある。だから国民みんながある意味、お金的に裕福でなくても“今を生きている喜び”を実感できるし、辛くても充足感というところで満たされているんじゃないだろうか。そこが幸せの国と言われる理由なのかもしれないね」。
そして日本への思いも馳せながら、亜門さんは話します。
「日本も『こんなに物があり、こんなに人もいて、こんなに安全な素晴らしい国で、本当に素敵だよね』って、みんなで言い合えると、それは素晴らしいことになるよね。それが言えないというのは、自分の心がいつの間にか、資本主義の尺度になって惑わされているからだよ。それに周りの人と比べて、自分自身を非難してしまうなんて、考えれば考えるほど『もったいないなー』と思う。
“物がない人たち”だからできるのではなくて、“物があっても”できるはずだよね。その中で自分たちの選択する方法とか、こんなに幸せに生きていることを感じ、お互いが『すごいねー』、『ステキだねー』って言って、『だからこそ、自分たちが他の人にできることしたいねー』って。こんな流れになれば日本って凄い国のはずなんだよ。
これは貧しいからとか、お金持ちだからとかは、何も関係ないと思います。
それぞれができることが山のようにあって、そのなかで人と触れ合っていくことが必要なんだろうと。そういう意味で、ブータンは愛と思いやりみたいなものが常に、人と家族の関係になっていると思いますね」。
ポプジカの谷では、ヤクや羊、馬を放牧する人たちの姿を多く見かけます。まさに自然との共存生活。
さらに、ブータンの自然の在りようにも亜門さんの話は及び・・・・・・。
「ブータンには、圧倒的な自然があって、人々が共生している。特にこの大自然の静けさ、巨大な山々が音を吸いこんでいく様は、言いようのない凄みがある。
こんな無音の耳がキーーーンと鳴ってしまうような中で、自分が存在していると、どうしても無になって自分自身と向かい合う。それに、目の前にはあまりにも美しい景色が壮大に広がって、不思議な感覚になる。その中で目を閉じると、自分の呼吸が聞こえてくる。すると思うんだ『あ、僕は今、呼吸している、生きている、こうして命をもらって生きている』って。生きているという実感が湧いてくるんだ。
現代人にとってここは、本当のシャングリラだと思う。それは便利で施設が素晴らしいということではなく、自分自身に戻りやすい場所、自分自身を見つめる本当の贅沢な静かな時間が持てる場所、という意味では、幸福の場所なんだよ。
もちろんブータンは公定料金制度など、旅をするにはお金はかかるし、いろいろあるけれど、必要な時間を求めている人には、大切な場所なのではないかと思う。
ホテルでもいいし、農家にホームステイでもいいし、いろいろな方法で、自分自身と向き合えるから、それぞれのブータンとの触れあいができるよね。
こういう場所は、本当になかなか世界にも残っていないからね」。
残りわずかのブータンの旅。幸せの尺度の神髄がだんだんと姿を現してきたような。
最後に・・・・・・今回は、ホテルではなく、今、ブータンでも人気の農家ホームステイのお話をコラムでご紹介しますね!!
カディン チェ ラ!