「生きるってどういうことだろう?」「幸せってなんだろう?」
そのヒントがあるのではと、宮本亜門さんとブータンをおとずれました。
10泊 11日のブータンの旅。
その旅はあまりにも新鮮で、あまりにも清々しくて・・・・・・。
今回の旅で、素晴らしい贈り物を、たくさんもらいました。
それらをぜんぶ素直に届けます。
それが、WEBマガジン・ハタラクだからこそ、できることだと思ったので。
全20回のブータンストーリー。
毎週日曜日に更新中。
あなたもブータンをとおして、幸せを、生きることを、感じてください。
カディン チェ ラ(どうもありがとう)!!
12月24日 前編
ブータンは新しい国!
わたしたちの旅も、明日で終了を迎えます。
今までのブータンでの日々を、亜門さんが振り返りはじめました。
「僕は今まで、後進国といわれているような国々、例えばアフリカや、アジア各地を周ってきたけれど、ここブータンはそれらとまったく違いました。
それは、この国は新しいということ。
国王が誕生したのも、国ができたのも、日本の歴史と比べると、驚くほど新しく、その中で、彼らは何を本当に大切にしていくべきかを、真剣に考えていた。
国王も、側近の人たちも色々な国を見て留学し、勉強して、新しい国ブータンの在り方を試行錯誤しながらつくっている。人類の歴史が創り出した、誤った過ちである戦争も、同じように繰り返すのではなく、出来る限り、話し合いからと取り組んできた。
この近代で、国王という制度の元、この新しい国が、他国と同じような消費社会的な物質社会にならないよう真剣に心掛けているのには勇気づけられさえする。
物を得た、得ていないなどの資本的、価値判断で幸福を計らない。むしろ反対の考えかた、人間一人一人の心の中の充足感を大切にして、信仰をもとに考えていることが素晴らしいと思う。資本主義社会が差別、貧困を創り出している今、ここは新たな人類平和のヴィジョンを考えようとしている。それが他の国とは驚うんです」。
話はさらに具体的になり、亜門さんもますます熱く語ります。
「例えば小さい事だけど信号。ティンプーのように車が多く行き交い街で、いくつも交差点があるのに信号は一つもない。この自動車の数をみると、正に奇跡ですよ。それにどの車も整備ができた直線の広い道でも無意味にスピードは出したりしない。良い意味で、心を自分でコントロールできて、ブレーキがかかっている。
それに、山の道もあえて、全部舗装せず、自然の環境が壊されないように、一つ一つ、丁寧に考えながらつくり、何が大切かを見据えながらブレーキをかけている。便利という名の元、乱開発することが多い今、ブータンならではの強い意志がここにも感じられるんだ。
人々は、ネットもやるし、携帯電話 iPhoneもみんなが好きに持てるし、ほとんど通じる。そのスピード感と、ブレーキのかけ方を、ブータンの人たちが仏教という精神性を活かし、どう生活の中に入れていくか、これからが楽しみだ。
とにかく国王や役人たちがとても注意深く、危険視もしつつ、『人の幸せは何なのか』を真剣に考えようとしている。これは個の私利私欲ばかり考えている資本主義社会ではなかなかできることじゃないよね」。
では、なぜブータンの人たちは、ブレーキのかけ方が長けているのか。亜門さんはこう考えます。
「とても興味深い話を聞きました。
先日、僕たちが訪れたポプジカの谷には、オグロヅルがいたよね。実はあの村に住む地元の人たちは、観光客をもっと呼びたいと道を舗装してほしかったんだそうだ。でも国王は鶴のことも心配し、ちょっと待ってくれと国王自らがその村の人に何度も行き、村人たちと何が大切か話し合った。『便利、儲けだけを追求していたら・・・・・・この村のすべてのオグロヅルがいなくなる可能性もある』と。
結果、国王が去ったあとも、村人たちは何度も話し合い、自分たちで考え意見をまとめ、『舗装はある場所にまでにしよう』と決めたそうだ。
『ただ便利だから、いいのではない。次にどうなるか、一緒に考えていこう』、
『今の目の前の便利だけを追求したら・・・・・・世界各国の現状のように、次、次と競争にまみれ、毎日が疲れ切って、忙しさで、何のために仕事しているのかわからなくなってしまう人が大勢いる情況になる。それでいいのですか』と話し合ったんだね。
このように国王が投げかけることで、国民が自分で考えて、行動を決めるという姿勢。僕らも見習うべき点が本当に多い」。
カディン チェ ラ!
誰かのお蔭で生きている
ゾンをはじめ、ホテルのレストランやロビー、民家などで『タンカ』と呼ばれる仏画を、いくつも観ました。その中のひとつに、とっても可愛らしくて、ほっこりする仏画がありました。それは下の画像です。
この絵には、ある仏教のお話が関係しているとか。その一例をちょっとご紹介しますね。
『サーリプッタ(舎利弗、しゃりほつ)とモッガラーナ(目犍連、もっけんれん)を差し置いて、上位の席に坐ろうとした僧に、ブッダがこんな話をした。
鳥とサルとゾウが、お互いに誰が一番年長かと議論して、一本の木をいつ頃から知っているかによって判断しようということになった。
そして鳥が木の苗が植えられる前の様子を知っていたことが分かり、最年長だと認められた。鳥はブッダ、サルはサーリプッタ、ゾウはモッガラーナの前世であったことをブッダが教え、年長者を敬うように諭したという』
むずかしい解釈はなしにして、象はサルのお蔭で、サルはウサギのお蔭で、ウサギは鳥のお蔭で、鳥は象のお蔭で、支えられて生きているということなのかなと。ひとりじゃ生きてはいけない。誰かのお蔭で生きているんですよね。
そんなことを改めて教えてくれるこの仏画、ハタラクのお気に入りです。
宮本亜門AMON MIYAMOTO
演出家
1958年1月4日生まれ 東京都出身
ミュージカル、ストレートプレイ、オペラ、歌舞伎等、ジャンルを越える演出家として国内外で幅広い作品を手がけている。
http://amon-miyamoto.com/jp/
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- December 25th, 2015
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