Vol.03本道佳子マネージャー日記 それがあなたの塩加減
2015.01.08
シンプルでありながら、味の決め手となる「塩」。塩少々とか、塩ひとつまみとか言いますが、何といってもその微妙なさじ加減が難しいわけで。
あるとき、本道さんに聞いてみました。
本道さんは、ご自分の料理を『シンプルで簡単』だと言いますが、
本道さんの手が織りなす絶妙な塩加減は、やっぱり誰にもマネできないのではないですか、と。
そのときの本道さんの答えはこうでした。
「たしかに味を決める時に塩は大切なんですけどね〜。
でも、食べてくれる人をイメージした時にさっとつまんだ塩が、一番ちょうどいい量なんですよ。」
そして、こう続けました。
「大切なのは、その時に迷わないこと。
これぐらいでいいのかな、多いかな、少ないかな、と迷いながら味をつけると
その迷いのエネルギーが料理に入るから、食べた人にも迷ったエネルギーが入っちゃうんです。」
そして最後に。
「その量の塩を手にした自分を信じること。
自信をもってビシッと味をつければ、その時に必要な塩加減で味が決まるんです。」
塩よりも何よりも、この言葉が私の心にビシッと刺さりました。
その感動を伝えても、やっぱり本道さんは
「そんなすごいこと言ってないんだけどなぁ」と言って、ウフフと笑うだけなのですが。
でも私は思ったのです。
家族や自分の体調や疲れ具合はその時によって変わる。
だからこそ、その日その日でちょうどいい塩加減がわかるのは、
つくっている自分自身なのだと。
つくる人が、食べる人(もちろん自分自身を含め)のことを思ってつくれば、
そのエネルギーは手から料理へ、そして食べた人の細胞にまで伝わっていく。
だからこそ、自分がどんな気持ちや状態で、
そして、誰のためにつくるのかが大切である、ということなのです。
コンビニやスーパーで売られる不特定の『誰か』のためにつくられたものや、
レストランの調理場で顔が見えない『お客様』のためにつくられたもの。
それらと、誰かの顔を思い浮かべながらつくられた料理はどこか違う。
たとえ食材や調理の腕が劣ったとしても、他にはない、特別な味わいを持っていると思うのです。
これ以来、キッチンに立つときは、心も体もまっすぐに保とうと意識するようになりました。
そうしたら自分の状態が如実に料理に反映されることにも気付き始め・・・・・・。
私は、私にしかできない塩加減で料理をつくっていこうと、改めて背筋が伸びたのでした。
そうそう、また別の機会に本道さんと話をしたときに
「料理によって、塩の振りかたや振るときの高さを変えるといいんですよー」
という、これまた為になりそうなお話を耳にしたので、
いつか詳しく聞いたら皆さんにもお伝えしますね。