Vol.27本道佳子マネージャー日記
最期の晩餐
2015.08.06
先月の7月18日(土)、熊本にて「最期の晩餐・食事会」が行われました。この食事会は、7年ほど前から熊本県・藤岡医院にて定期的に開催しているもの。
薬剤師であり、心理カウンセラーでもある藤岡医院の院長夫人:マダムと、本道さんの想いが一致したことから始まりました。
現在は、熊本県で活躍中の歌手:KO-KO(こーこ)さんも加わって、会を多いに盛りあげています。
それにしても、「最期の晩餐」という言葉は、インパクトがありますよね。
実際にこの会は、末期がんの患者さんとそのご家族が集まって一緒に食卓を囲む、という主旨。
文字だけ見ると、とてもシリアスに思えます。
でも実は、皆さんが抱くであろうイメージとは異なる、最大にして唯一のポイントがあるのです。
それは、「最期の晩餐」=“亡くなる前に食べる食事“ ではないということ。
これは 『病気と決別するための食事会』 なのです。
末期がんを患い、食事も喉を通らなくなった人が、本道さんがつくる、色鮮やかで力強い野菜だけの料理を目の前にする。
食べるのが怖い・・・・・・。病気の自分が食べてよいのか・・・・・・。
そんな葛藤を抱えながら、おそるおそる口にした料理をとても美味しいと感じたとき。
人の顔というのは、一瞬にして変わるのだそうです。
本道さんの言葉を借りると、「瞳の奥がキラっと光る」のだとか。
久々に感じる「美味しい」という感覚。
家族と同じ食卓を囲み、同じものを口にできたという喜び。
自分もまだ皆と同じように食事ができるという自信。
食べ物によって体と心で感じるこの真の感覚は、もう皆と同じ料理は食べられないと思っていた悲しみや、食べてはいけないと思い込んでいた恐怖をはるかに越えて、「もっと食べたい、もっと生きたい」という希望に変わるのです。
そうした希望を持った瞬間から、人は変わります。
今までの価値観や生き方をまったく変えて、残りの人生を思いきり楽しむ人もいれば、本当に病気と決別する人もいるのだとか。
希望というのは、次の瞬間へといのちを紡ぐ種なのかもしれません。
そしてもうひとつ。
この食事会で大切にしているのは、がん患者さんの家族の心のケア。
末期がんの患者さんのご家族だって本当はものすごくつらい。でも、それを口にしてはいけない気がして抱えこんでしまっている人が多いのです。
そうしたご家族も、末期がんの当人と同じ食卓を囲み、心からの笑顔を見ることで、肩の力がふっと抜けて気持ちが楽になる人がたくさんいるのだそうです。
きっと、これらはすべて「食べることは生きること」 だから。
食べるという行為は、今をかみしめること。
だからこそ、がん患者さんもそのご家族も、同じ食卓で同じものを食べることによって、変えられない過去を責めたり悔やんだり、遅かれ早かれやってくるであろう未来を怖がったり悲しんだりすることよりも、かけがえのない「今」の幸せを感じることができる。
今回、食事会の生の現場を見て、私はそう感じました。
そうそう、現場を見てもうひとつ感じたこと。
それは、この食事会を実現している熊本チームの素晴らしさです。
食事会を全面的にバックアップするまじめでお茶目な院長先生と、心がとってもきれいで温かな発案者のマダム。
どんな困難も解決しながら企画・運営をする超敏腕プロデューサー、本道さんの想いをすべて理解し形にする天才シェフ、スイーツで素晴らしい世界観を表現する偉才なパティシエ、どんな物も溢れるセンスで形にできる多才なアーティスト。そして、毎回サポートしてくださるスタッフの方々。
それぞれに抜きんでた才能と魅力を持った人たちが集まったこのチームは、とても明るくて、本当の家族以上の結束力を持っています。
そこに、フーテンの寅さんのように時々帰ってくる本道さんが加わったときの爆発力みたいなもの。
それこそが、人が持つ複雑な感情を越えたところにある、一番シンプルで一番大切な「生きる」という本能を呼び起こすような気がするのです。
こうして続けてきた熊本の最期の晩餐・食事会。
最初の参加者は10名程度たったそうですが、今や100名を超える大きな会となりました。
もちろん、全員がガン患者さんとそのご家族なわけではありません。
最近では、健康な人もたくさん参加して「人生最期の日に何を食べたいか」を考えてもらう機会にもなっています。
もともと本道さんは、今健康な人にこそ、その人にとっての「最期の晩餐」を感じ・考えて欲しいという思いを持っていたので、それがまさに形となった会でもあるのです。
近いうちに東京でも開催する予定なので、お近くの方は是非ご参加くださいね。
そして、今をかみしめながら感じてください。
「今日が人生最期の日だとしたら、あなたは何を食べたいですか?」
最期の晩餐で作った彩り鮮やかな麺
スイーツのテーマは 海で紡ぐ世界