Vol.29本道佳子マネージャー日記
正反対なもの
2015.09.03
あんなに暑かった日々が遠い昔のことのように。夏がその気配を隠したまま、気付けば9月へと突入してしまいました。
ですが、あえて「夏」について振り返ってみると。
この夏、本道さんから一番聞いた言葉のひとつは「スイカ」のような気がします。
そう、本道さんって、スイカが大好きなんですよ。
岐阜でも熊本でも東京でも、おいしそうなスイカを見かけたらすぐさま買う、という場面に何度も遭遇しました。
そんな本道さんですが、もちろん甘くないスイカを買ってしまうこともあるわけです。
一口食べたところで「思った味と違ったー」、と。
どうしても食べたくて買った物、食べるのを楽しみにしていた物の味が、期待を大きく下回ったときって、地味でありながら、けっこうな痛手を負いますよね。
ですが、そこはタダでは起きない本道さん。
甘くないスイカを買ってしまったときにどうするかというと。
「すいかカレー」を作っちゃうのです。
びっくりしませんか? すいかカレー。
私が初めて聞いたときは、頭の上を2つか3つ、クエスチョンマークがよぎったことを覚えています。
でも知れば納得。すいかは9割以上が水分だから、すいかの水分を「水」と見立ててカレーに加える、ということでした。
作り方はいたって簡単。
皮を切って実だけにしたスイカをザルで漉し、種を取りのぞいたら、あとは普通のカレーと同じ。水を加えるタイミングで、この漉したスイカを加えればよいのです。
そして、気になるのはそのお味。スイカの独特な甘みってカレーと合うのかなぁと思うのですが、一口食べればこれまたびっくり。
ほんのりとスイカの甘味を感じた後から、カレーのスパイスの風味がふんわりと広がって、最終的に口の中で甘さと辛さが見事にまとまるのです。
本道さんとしては、お子様でも食べられる甘口カレーのイメージなのだとか。
たしかに、辛い物が苦手な大人からお子様まで幅広く味わえるお味です。ちなみに、私は辛い物が大好きですが、甘さの中でピリリと口に広がるスパイスの風味に大満足でした。
本道さんはこう言います。
「スイカが甘いからこそ、正反対の辛い物を合わせることで、双方の味が引き立つんですよー。」
そう言われてみると、本道さんは、苦みが強い菜っ葉のサラダに甘さのあるドライフルーツを合わせたり、柔らかめのひじきにカリっとした食感のグラノーラやナッツを合わせたり。
味でも食感でも、あえて真逆なものを組み合わせることで、そのコントラストが楽しめる料理をよく作っています。
また、『アメリカにいた時に教えてもらったこと』として、こんなことも言います。
「山の物に味を付けるときは海の塩を、海の物に味を付けるときは山の塩を使うといいんですよー。」
山の物=『野菜やお肉』には海水から採れた塩を、海の物=『お魚や海藻』などには岩塩を使うと、違う場所で採れた素材同士が味を引き立てて風味が増すのだそうです。
「正反対なものを合わせる」というのは、普通に考えると少しハードルが高く思えるんですけどね。
本道さんからすると、遊びのひとつであると同時に、それこそが双方の良さを最大限に引き立てるベストな手段でもあるのでしょう。
よく考えてみると、それは料理だけでなく、人でも環境でもすべての場面に言えるのかもしれませんね。
自分とは全然考えが違う人だなぁと思っていても、きちんと話してみるとものすごい化学反応を起こして素晴らしいアイデアが生まれたり、無駄だなぁと思うような出来事が起きたときこそ、その真反対にある大切な物事に気付いたり。
本道さんがよく用いる「正反対」には、何か大切なものが潜んでいるような気がします。
そういえば、つい先日、こんなことがありました。
お客様で、超スピード婚をしたと連絡をくださった方がいたので、それを本道さんに伝えたのです。
すると、「超スピード婚ができる秘訣を皆に伝授してもらいましょー」という言葉とともに、こう言いました。
「超スピード婚だからこそ、毎日のご飯はゆっくりと丁寧に、心を込めてつくるといいですよ。」
やはり、本道さんの正反対理論には、幸せや平和に向かうとても大切なヒントがある気がしてなりません。
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