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Vol.33本道佳子マネージャー日記

Vol.33本道佳子マネージャー日記 最終回:平和ってなんだろう

2015.12.31

国境なき料理団がかかげている想い。
 
それは、 「食で世界が平和になったら・・・・・・」
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初めて会った人とでも、美味しくご飯を食べる事ができたなら、
友達はドンドン増えていき、アッという間に食を通じて世界が一つになれると信じています。
 
[国境なき料理団HPより: http://www.cook-ambassador.com/]
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これが、国境なき料理団、そして本道さんの想いです。
昔も今もずっと変わりません。
 
聞くところによると、本道さんは、国境なき料理団を形にするずっと前、たしか子どもの頃から、この想いを持ち続けていたのだとか。
 
でも、世の中の動き、時として争いを望んでいるように見える最近の流れを見て、私たちはふと考えることがあったのです。
「平和ってなんなんだろう」と。
 
今、私たちが思う「平和」の形。
それは、もちろんとても大切で、ひとつの答えであるとは思うのですが。
 
地域によっても、国によっても、状況は違う。
日本だけ見たって、県によっても市町村によっても、置かれている状況も違えば、抱えている問題も違う。
細かく言えば、各家庭のひとりひとりによって状況は異なる。
 
世界には、食卓を囲むどころか、今日いまこの瞬間に食糧があるかどうかが生死を分ける毎日を送っている人もいるし、きっと自国の平和を本気で願って、戦争に身を投じる人だっている。
日本にも、一人でご飯を食べざるを得ない環境の子供たちがたくさんいると聞きます。
 
そうした状況において、「世界を平和にする」とは、どういうことなのだろうか。
 
 
出てきた答えは、「難しいことかもしれない」でした。
 
状況も違えば、考え方も価値観も違う全世界の人たちを、あるひとつの視点から「平和」にすることは、到底難しい。
 
じゃあ、どうするのか?と、もう一歩考えたときに出てきたのは。
「まずは自分が平和でいること」。
 
誰かのために生きられたら、誰かの幸せのために過ごすことができたら、そんな素晴らしいことはないけれど。
 
でも時として、「誰かのためにする」こと・「してあげる」ことというのは、方向を見誤ったり、思わぬすれ違いを生む可能性があって。
そのすれ違いが、大小問わず争いを生んでいるような気がするのです。
 
だったら、まず自分が平和でいる。
自分だけの平和なら、他の誰かや大きな何かの存在を意識しないで、自分の心が本当に望むことだけをすればいい。
 
そうして心穏やかにいられたら、それは必ず、周りの人に派生していくと思うのです。
ちょっとした表情や、何気ない発言にも、必ずその心の平和は表れるはずだから。
 
直に接する人たちには、必ずそれが伝播するでしょうし、楽しそうに笑う顔は、それを偶然遠くから見た見ず知らずの誰かの心を一瞬溶かすかもしれない。
自分の中に灯った光は、周りの誰かや環境に光を向けることができる。そんな気がしたのです。
 
そうした小さな事象の積み重ねによって世界を平和にしていくことは、一見気の遠くなるような作業かもしれません。
 
でも、そうした意識の人がひとり増えれば、そのスピードは倍になる。
10人増えれば、100人増えれば・・・。10倍、100倍という単純計算に留まらず、加速度的に進んでいくと思うのです。
 
 
だからまずは、本道さんも私も、「自分自身が平和でいましょう」ということになりました。
 
もちろん、それだけでは終わりませんよ。
 
全世界を平和にすることが難しいなら、じゃあ何もしなくていいのか、というと、やはりそういう結論には至らなくて。
たとえ難しくても、一歩を踏み出して前に進んでいくことは、きっと必要だと思ったのです。
 
自分の中に光を灯したうえで、これから何をしたいか、何ができるのか。
ここから生み出されるものが、来年の私たちの歩みになっていくように思います。
 
だから来年も、皆様おひとりおひとりのお気持ちを、少しずつおすそ分けしていただけたら、こんなに嬉しいことはありません。
 
 
1年間続けてきたハタラクでの連載は、今日をもって終了しますが、また必ずどこかで皆様と会えますように。
 
お読みくださった皆様、ここで連載する機会をくださったハタラクスタッフの皆様。
本当に本当にありがとうございました。
 
とても幸せな場所でした。
 
これからも、どうぞよろしくお願いいたします。
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りんごとルッコラとザクロのサラダ
 
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里芋と切干大根のサラダ パプリカパウダーを振りかけて

Writer Profile

天野麻里江
天野麻里江Marie Amano

本道佳子さんマネージャー
大学卒業後、システムエンジニアとしてIT企業に入社。法務部で契約書作成にも携わる。2011年3月、本道さんと出会って価値観が大きく変わる。2013年夏に退社。本道さんマネージャーと国境なき料理団事務局を担当し、皆様に本道さんの魅力を届けるべく活動中。
小さい頃から食べることが大好きで「おいしい食べ物は人を笑顔にする」と信じている。

本道佳子(ほんどう・よしこ)
NPO法人・国境なき料理団 代表理事。高校卒業後、単身で渡ったアメリカで世界中の料理に触れる。帰国後は野菜料理のシェフとなり、『食で世界が平和になったら』の想いを胸に、病院とのコラボ「最後の晩餐」など様々な活動を続ける。その人柄と大胆でカラフルな野菜料理は評判となり、2014年「湯島食堂」閉店後も、世界の各地で愛あるご飯をお届け中。

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