Vol.13本道佳子マネージャー日記 「三位一体のフナクリ食堂」
2015.03.19
岐阜にある船戸クリニックという病院。その病院の憩いの場とも言える「フナクリ食堂」。
こちらは、『薬の代わりに美味しいご飯で心も体も元気になろう!』をコンセプトにした食堂です。
もちろん、食事がそのまま薬の代わりになるということではありません。
でも、薬に頼り過ぎず、「食事」という日常生活を大切にすることが、健康への一番の近道である。このことを、病院の先生自らが提唱し、実践しているのって素敵だなぁと思うのです。
本道さんは、そんなフナクリ食堂へ月に2日お邪魔をして、ランチをつくっています。
私が本道さんに付いて、初めてフナクリ食堂の現場に行ったのは、たしか半年ほど前のこと。
その盛況ぶりに驚いたことをよく覚えています。
特にイベント形式なわけではないんですよ。本道さんとフナクリ食堂スタッフの方が厨房でつくったランチを、入れ替わり立ち代わり来るお客様にお出しする、いわゆる通常の食堂スタイル。
でもなんだか、とっても活気があったのです。
たくさんのお客様がいる中で、おひとり強く印象に残っている方がいます。
足が悪く、杖をついているご年配の男性。一見すると、無口で強面にも見えるお顔立ち。
年のころは、60歳過ぎか、ひょっとしたら70歳も過ぎているでしょうか。
その方が本道さんのご飯を食べ終わり、帰るためにゆっくりと立ち上がりました。
そのまま出口へ向かうかと思いきや、厨房をのぞき込んで本道さんに声をかけたのです。
「今日もとっても美味しくて元気になりましたよ! ありがとね〜。来月もまた来ますわ!」
年配の男性は、野菜だけの料理『Vol.04参照』にあまり興味がないのでは?
なーんて、私の勝手な先入観なのですが。
本当に何気ないその一場面に、じんときて。その瞬間シャッターを押したかのように、私の心にはその場面が焼き付いたのです。
その後も、フナクリ食堂へ行くたびにその男性を見かけました。
そして、つい先日。
その日は遅めの時間で席も空いていたので、私もお客様に混ざってフナクリ食堂にて、本道さんのランチをいただくことにしました。
ふと見ると、向かいのテーブルにれいの男性が座っています。
ほどなくして、ランチが運ばれてきました。
おひとりで食べ始めたところに、もう一人同じ年齢ぐらいの男性が登場。おふたりは一緒にランチを食べ始め、そして会話を始めました。
なんて話していたと思います?
「この野菜は何ていう名前だっけ?」
「これは、何で味付けをしているんだろうなぁ。」
「今日のポタージュは里芋だって。コレうまいよ。昨日のお味噌汁みたいなのも美味しかったけど、今日のはまた全然違うなぁ。」
ずっと、ずーーっと、こんな会話をしているんですよ。
最終的には、スタッフを呼んで料理の説明を聞いていました。実際には、運ばれたときにすべて説明されているので、答え合わせみたいなものですけどね。
おふたりは、とっても楽しそうに答え合わせをしているのです。
「あーそうだそうだ。言われてみれば、その味がした。」 「ほら、わしの言っていたとおりだったろ。」 なんて感じで。
年配の男性ふたりが、野菜料理談義に花を咲かせている。
なんだか私、すごい場面に遭遇した気がしました。だって、そのおふたりの放つ空気、キラッキラなんですもん。
そして、れいの男性は「あー、本当に美味しかった。では、今から元気に治療に行ってきますわ。」そう言って席を立ち、また杖をつきながらゆっくりゆっくり歩いていきました。
この様子を見て思いました。
料理の味で最後の最後に決め手となるのは、食べる側の姿勢や気持ちなのかもしれないって。
どんなに素晴らしい料理でも、食べる人の気持ちがそこに向かっていなければ、味気ないものになる。
でも、食べる人の向き合いかたによって、それは他にふたつとない、とびきりの料理にもなる。
PCやスマホを見ながら、どんな具材がどんな味付けをされていたかもわからないように食べるのと、目の前の料理を楽しみながらひとつひとつの素材を味わっていくのでは、決定的に何かが違うと思うのです。
ただ空腹を満たすだけのものか、しっかりと心まで満たしていくものか。同じ料理でも、どういう食べ方をするかによって、心身への作用がまったく変わるのだと、この男性から教えてもらった気がしました。
場をつくった病院の先生方、料理のつくり手である本道さんやフナクリスタッフ、食べ手であるお客様。
見事な三位一体によって、『食事で心も体も元気に』のコンセプトが実現されているフナクリ食堂は、明るい未来を創るために「今」という瞬間を大切に味わう、未来型食堂のような気がしてなりません。
そんな食堂が日本中・世界中にできたら…、とっても素敵ですよね!
写真はフナクリ食堂でつくった本道さんのランチ
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